医師の集団離職
2024年02月01日
今年10月から国立大学法人法が改正されますが、運営費交付金削減の影響を受けている東京芸術大学などでピアノなどの備品売却やクラウドファンディングの動きが始まっています。現在、日本の大学の統合・淘汰が国公私立大学を問わず始まっていて定員充足数に達していない短期大学などは募集を停止している学校もあります。また、長期間に及ぶ基礎研究・技術開発に必要な経営資源が不足しているなかで、多額の国費(税金)が投入されている国公立大学の医学部および卒業後の進路のあり方に対する有識者の意見も多く耳にします。
これまでも身近な事例として救急患者搬送時のたらい回し(救急隊員が複数の救急病院へ受け入れ要請をすること)、研修医の長時間勤務・無報酬労働などが指摘されていましたが、最近はER(救急救命と総合診療)を中心に医師の善意に頼ることへの限界や、院長交代等による経営方針転換に医師が働き甲斐を見いだせなくなることで医師が集団離職して専門的な高度診療が受けられなくなる地域や医療機関もあるようです。そのため、残っている医師への業務負荷が高くなり、業務時間外の連絡・出勤要請などで満足に休息すらできない状態が更なる退職者を生む悪循環を起こしていると言われています。
今後、団塊世代が75歳を超える後期高齢者医療費(1人あたり95万円/年、厚生労働省資料)の社会保障費膨張が懸念されるなかで、健全な病院経営(適切な勤務・報酬など)と社会保障費抑制を両立・継続していくためには、患者の意識改革も必要でしょう。海外では家庭診療医(掛かり付け医)による医療が一般的で、必要に応じて専門性の高い病院へ紹介状を発行するそうです。また、ネット診療の利用や緊急度の低い慢性病(高血圧等)外来・処方箋発行は原則2ヶ月に1度とする、生活習慣見直しと同時に健康診断による早期発見・早期予防を心掛ける、普段から緊急時連絡先やお薬手帳を持ち歩くなど、まだまだ自分たちで出来ることはたくさんあると思っています。