蟹と食の安全
2024年01月22日
昨年11月に解禁された日本海側で獲れる国産ズワイガニ漁(松葉ガニ、間人(たいざ)ガニ、越前ガニなど)は豊漁が続いていましたが、シーズンを通した安定供給維持を目的とした資源保護(自主規制)が奏効していました。また、報道映像等で見かける甲羅に付着している黒色様のつぶは「カニビル」と呼ばれる寄生虫のたまごだそうで、カニ自体には影響がなくカニビルが多いと脱皮から時間が経っていることから実入りが良いと言われています。越前がにの高級ブランド化が進むことで高い値がつくようになりましたが、昨年末までは雌のセイコガニが豊漁で比較的手頃な価格で購入できていましたね。
また、ズワイガニはアメリカ国内での旺盛な需要により高値が続いていましたが、コロナ禍での内食需要も落ち着いたこと、およびロシア産ズワイガニをウクライナへの侵攻に対する制裁(不買)品目としたため、カナダ産を含めて値段が下がる傾向にあるようです。そして今回の能登半島地震では4mの海面隆起により寒ブリは記録的な豊漁となりましたが、蟹漁場への影響はこれから徐々に明らかになることでしょう。そのほか京都の黒門市場では日本人以外が経営する店舗の一部で訪日観光客向けに蟹を含めた海産物が異様な高値で販売されており、以前の黒門市場とは様変わりしていて本来の魅力が薄れ日本人の買い物客は減少の一途だと言います。
その他、中国江蘇省にある蘇州陽澄湖産の上海蟹(チュウゴクモクズガニ)は海外でも有名で高値で取り引きされるのですが、湖自体の環境汚染、産地偽造(陽澄湖の養殖池の水に浸けただけ)、抗生物質を使った養殖など品質が疑問視されるものも数多く流通していて日本では上海蟹は特定外来生物法の対象で生体輸入が禁止されています。編集人も上海駐在時にモクズガニを食しましたが、恐らく別産地のものだったと思っています。なお、日本各地にも多くの種類のモクズガニが生息しており食用にされています。実入りは少ないのですが、汁物としての出汁の味は格別で甲羅や殻を擂り潰すとビスクとはまた異なる特有のうまみが素晴らしいですね。