オフィス鴻

航空管制と人員体制

2024年06月28日

本年1月2日に発生した日本航空機と海上保安庁機の衝突・炎上事故が起こる前から、国土交通省から重大インシデントには該当しない空港内でのトラブルが発生していた事実などが報道されることは少なかったと思います。航空管制業務に就くには、航空保安大学校(大阪府泉佐野市)で研修を受け航空管制官・航空管制運行情報官・航空管制技術官として配属されることとなります。最近は航空局本局勤務を含め、航空管制業務には約1千人弱が就いているものの変則勤務体系(夜勤・日勤等の輪番制)や過度の業務プレッシャー(中には上司のパワハラもあるといわれ、国家公務員職のため個人への労働審判は行えず地方裁判所で組織に対して訴訟の第1審をスタートするなどハードルが高いです)、インバウンドによる1人当たりの取扱数増加などから、30歳前後で精神的・肉体的限界を感じて退官する技官が多いとも聞き及んでいます。

また、以前にはパイロットの飲酒検知や身代わり不正行為が報道されていたこともありましたが、民間の空港グランドスタッフも含めた航空行政全体の労働環境改善と処遇改善がなければ、これから先は最新AI等による管制補助システムが導入されたとしても、どこかでヒューマンエラーの罠が潜んでいるように思います。また、2月には国交労組(国土交通労働組合;約1.7万人)が国土交通省航空局に大幅な新規増員を求める申し入れを行いましたが、その中でメンタルケア体制の拡充が含まれていたことは先述の事故を含めた危機感の表れとも言えそうですね。

同じように、若年自衛隊員の減少・定年延長(55歳~)、官舎の老朽化対策などが挙げられます。また、最近の傾向として待遇の良い外資系コンサルティング企業が人気になっているそうです。日本行政の最高機関である省庁のキャリア官僚(国家Ⅰ種)の人気が、時間外勤務の上限が無い国会答弁対応(特例業務)などにより低下するなど、職種に限らず日本を支えてきたエッセンシャル・ワーカー全体の疲弊感が現在の日本国の活力低下を表しているような気がします。