オフィス鴻

運送多重下請けの是正

2024年06月05日

政府は2024年度の通常国会で物流関連二法を改正する方針であると、2月の日本経済新聞が伝えています。特徴的なのは元請運送事業者に取引管理簿作成の義務化を課すことで下請け側が利益を確保して運転職の賃金引上げに結び付けるという内容です。改正対象となる法令は「物流総合法律化法(流通業務総合効率化法に改称予定)」と「貨物自動車運送事業法」、および関連告示等で編集人がこれまでのブログでも中間流通全体を俯瞰する必要性を論じてきた内容とも近いものです。

それでは「なぜ運送事業者間の多重下請け構造が問題になるほど多いのか」を検証する必要性があると思っているのですが、今回の法改正では元請事業者側が下請事業者との契約内容等を明記した管理簿作成を義務付け、契約内容に基づく附帯作業・待機時間料金の明記、標準運賃の8%引き上げが織り込まれる見込みです。つまり、経済資本主義を標榜して自由競争を促してきた結果、改正物流二法(1990年)による参入障壁の低さが規制緩和の欠陥を助長してきたことを認める内容であり一定の評価に値すると考えています。規制緩和前の中小運送事業経営者の中には高級外車を乗り回す人も多くいましたが、重大事故等での特別監査を除いて法律に抵触する行為(労働法、運送事業法等)で摘発されたケースは殆どなかった(車両運行停止処分は行われていました)ように記憶しています。また、ドライバーも労働(稼働)した分だけ給料が稼げた(過積載・長時間運行など)ため、現在の年収(400万円台)より多い6~7百万円を得ることもできた時代でした。

そこでは、多重下請けであっても荷主の要望次第では運送事業経営が成り立っていく下地や要素がありましたが、配送伝票を基に直接元請け先に低い運賃を提示して営業に行く京都のH運送のような事業者もあったことから、徐々に業界の健全性が崩れる一因になったと思っています。その点を含めて考えていくと、多重下請け構造自体にも課題はありますが管理簿には三次下請け以降の禁止条項・最低運賃表記などを盛り込む必要があると感じています。