政治的利益と経済効果
2024年05月20日
これまで積極的に中国からの投資を受け入れることで国内の経済発展を期待した国々で、中国経済の失速が様々なプロジェクトの遅延・中止といった形で影響がでていると言われています。例えばスリランカのように投資の見返りに重要なインフラ施設(港湾)の運用権など政治的・経済的側面から手渡したものの、実質的なデフォルト状態を招き国民生活に多大な影響を与えているケースも見受けられます。どの国家にも共通して言えることの1つに、政治・安全保障政策が経済的利益面より大きく影響することは、現在の日本が抱える安全保障や新規NATO加盟国などの承認などを見れば、あながち的外れな指摘ではないように思います。
一例として、ベトナムとの国境に隣接するカンボジアの東部経済特区(モンドルキリ州)で進められた空港建設は、観光資源も人口も非常に少ない地域でのプロジェクトでしたが、併せて実施が計画されていた電力開発事業も契約廃棄に至っています。コロナ禍による経済への影響が薄らぎ、本来であればアンコールワット遺跡群などへの観光客数増加を見込んでいたようですが、経済的メリットは目論見通りには行っていないようです。ただし、空港を始めとした大型インフラ建設ともなれば有事に中国軍が利用するであろうことは容易に想像できますから、いずれ何らかの形でプロジェクトが再開されることでしょう。
中国国内事情を鑑みても、大卒者の就職率は30%台(中国の統計資料は政治的配慮から正確でない場合もあります)と言われており、最近は大学院進学者が急増していると言います。また、高齢化の進行も予想以上に早く、生涯結婚しない国民も増加傾向にあるようですが、絶対的人口数を誇る中国人には優秀な方も多く今後さらに世界へと覇権を拡げていくことになりそうに感じます。一方で、これまで開発予定地域で生活を営んでいた人々が強制退去させられ十分な補償も受け取れないような事例もあるようですから、いつ国境線が変わっても驚かないような将来が待っているのかも知れませんね。