物流ホワイトナイト
2024年07月10日
名糖運輸㈱と㈱ヒューテックノオリンという日本有数のコールドチェーン輸送会社を傘下に持つC&Fホールディングに対して、今年4月同業のAZーCOM丸和ホールディングスが6月までの期間にTOB(株式公開買い付け、プレミアム付き1株3千円)を行うとの発表を受け、実質的な敵対的買収に対する提案への意見表明を「留保する」と発表した後、5月に入ってからSGホールディングスが法的拘束力のある対抗提案書(1株4千円のプレミアム価格)を提示してホワイトナイト的な買収合戦に発展しました。TOB総額は約650億円以上に上る見込みで、今後もトラック輸送業界でのTOBが盛んになる前触れと想定されています。
編集人のところにも本件に関しての問合せや質問が複数ありましたが、実際のところなぜAZ丸和がメインの事業領域でないコールドチェーンにこれだけの資金を使って強化していきたいのかははっきりとはわかりませんが、恐らく今後伸長が見込まれる冷凍食品輸送事業分野への参入を検討した結果と、BtoC宅配のAmazon配送員確保対策ではないかと考えています。さらに、AZ佐川急便がホワイトナイト的な立場を表明したのも、同じくAmazonが関連しているように思います。Amazonでは自社業務委託配送員の確保を進めている一方で、エリアごとに複数の委託配送業者を割り当てており、その契約内容も実質的にはAmazonの配車システム(最適ルート指示)を使っていることから、業務委託方式(偽装とも言われています)による社会保険料等負担の軽減や委託単価の引き下げ、1日当たり最低配送個数の引上げ策なども相次いで打ち出しています。
また、物流クライシスに関する政策協議に参加した大手宅配事業者3社(ヤマト・佐川・JP)からは、この業務委託方式およびトラック業界・団体が求めている「送料無料廃止」表記について全く反対意見が出されなかったことで、Amazonの圧倒的な物量と優越的な立場に抗わなかった点を考慮すれば当然の帰結なのかも知れませんね。