オフィス鴻

協力運送会社の存在

2024年07月09日

AZ-COM丸和によるC&FへのTOB(敵対的買収)およびAZ佐川急便のホワイトナイト対抗策(1株約1千円のプレミアム上乗せTOB)発表に続き、ロジスティード(旧日立物流)がアルプス物流(電子部品アルパインの子会社)の株式を約5,700円(プレミア30%以上)でTOB(株式公開買い付け)を行うことが発表されました。昨今、メーカー系企業が相次ぐコスト増を嫌ってノンコア事業を売却したり、物流業界では既に多くのメーカー系物流子会社がM&Aされ、残されたM&A案件を高値で奪い合うような構図が増加しています。

一般的に運送事業関連のM&Aは生成AI技術を活用した効率的配車計画アルゴリズムによる効率化が図れるメリットが強調されていますが、トラック仕様は貨物・納品方法・積載補助機器・温度管理帯等により数千~数万種類以上あると言われています。つまり、同じ大型車両と言う大区分だけで共同輸送や積載率向上が図れるのは、ある特定の条件下に当てはまるものだけであり、実態は荷主要望に合った車両を保有していないと価格競争に巻き込まれて経営悪化要因を招く主要因になっているのが実情だと考えています。そのため、大手物流事業者では傭車と呼ばれる協力運送会社の力を借りて自社トラックで運びきれない貨物を捌くことになるのですが、ご存知の通りトラックドライバーの総労働時間規制強化、高齢化の進行、なり手の減少により多くの運送事業者では慢性的なドライバー不足に頭を悩ませているのが現状です。

最近の有識者の論調の中には、多重下請け構造(第一種利用運送事業)による中抜き(仲介手数料)が安い運賃の主要因であるとの声が多いのですが、もう少し掘り下げてみればトラック輸送仕様の「共通化」と「共有化」を進めていくことの方が、中長期的視点ではドライバー不足の解消に一役買うのではと編集人は思っています。一般の方から見れば同じトラックのように見えますが、協力運送会社(全国6万社の99%以上が中小規模事業者)が存在するお陰で現在の物流網が維持されているのです。