オフィス鴻

黒字企業のリストラ

2024年08月29日

今年の株主総会を終えて円安基調・コロナ禍後の需要増加等で上場企業の好決算が続く中、大手黒字企業でも「40歳以上の社員」などに限定した条件付早期希望退職が行われています。最近は労働市場の流動化が進み人手不足の影響も相まって、バブル後のリストラに比べ金銭的条件面に拘り過ぎなければ再就職先探しには苦労が少ないという声を耳にします。また、優秀な社員ほど早めに当該企業に見切りをつけて好条件で転職する傾向があり、選択肢が増えたと前向きに考える従業員も多いようです。企業側も事業環境が目まぐるしく変わる中で、ノンコア事業・赤字事業の整理を進めるという点では黒字経営時の方が判断しやすいのでしょう。

また、現在の日本の労働法制下で企業が整理解雇を選択することは相応のリスクを負いますので、あくまでも希望退職方式が理に適っているように思います。ただ、これから定年退職者が65歳までの定年後再雇用を選択した場合(70歳までは努力義務となりました)、年金受給開始年齢引き上げ・社会保険料負担増加等の施策が生活に及ぼす影響が個々人で大きく異なることです。実際に年金支給日には税金・社会保険料控除後の金額が日本年金機構から振り込まれて驚かれる方も多いようで、団塊の世代のように高度経済成長期に資産が大きく増加したり、退職後に納めた年金より遥かに高額の年金を受け取れることは望めないでしょう。

編集人も2002年頃に人事部門を管掌していた時、希望退職と言う名の数百人の実質指名解雇を企業側の一員として経験しました。当時は、多くの企業で人事部門のリストラ担当者が罪の意識に苛まれて、特に部長・課長クラスは残務整理をして最後は自分が辞めることで一種の贖罪をしていたことを思い出します。メンタル面にも影響があり、駅のホームに立っていると入線して来る先頭車両に吸い込まれるような感覚になり、精神科医にうつ状態と診断された時期もありました。結局、若干の休養期間を経て他社で事業再生の仕事に関わることになり現在に至っています。