オフィス鴻

収入格差と統計

2024年09月19日

今年の夏季賞与は、経団連に加盟する大企業では基本給の引上げと円安による好業績等から平均100万円弱となったようです。もちろん、業種・企業によって違いはありますが、中小企業や非正規社員からすれば収入が大きく増加している実感より、物価高による生活費上昇のマイナス面が強いようです。一方で、株式相場の大幅上昇等で準富裕層(金融資産5千万円超)以上では資産が増加している方も多いと言います。しかし、国税庁や総務省が出している賃金統計関連資料を詳しくみていくと、平均値と中央値のギミックに気付くことが多々あります。例えば給与所得者の平均所得は450万円(賞与を除く)ですが、中央値は300~400万円が約2割となっていることや、さらに少ない層を含めると収入格差が拡大していることが判ってきます。ここに可処分所得(税金・社会保険料等を除いた実質手取り額)のフィルターを掛けると、実質的な手取りは約30万円程度となります。

編集人も経営企画部門で数値を見る時には独自の基準を設けて、それが前提であることを経営層に理解してもらった上で企画・提案・分析を行っていました。言い換えれば「統計の罠(落とし穴)」に落ちないよう全体像を俯瞰しながら数値を判断できるようにしていました。特に判断基準となる有意水準(差;0.05設定が基本)の妥当性、P値(確率)との比較(有意差)を曖昧にしてしまうと、恣意的な統計資料(一種の改ざん)となることを防げなくなるため、経営判断に負の影響を及ぼすからです。実際に新事業会社を立ち上げた時は、賃金規程作成の基礎となる賞与を含む給与データと賃上水準に関しては有意水準を10年後分まで変更しなくても大丈夫なように、何度もシミュレートしていました。

その最大の理由は、編集人が永久的にその新事業会社の経営をかじ取りする訳ではないので、もし途中で何らかの内的・外的要因により変更する必要性が生じた時に後任者が基準設定が原因で対応に困らないようにしておくためでした。