オフィス鴻

物流事業のM&A戦略

2024年09月24日

多くの物流子会社が相次いで大手総合物流事業者にM&Aされるケースが増えています。大手物流事業者にとって物流子会社の最大の魅力はシナジー効果による利益向上(親会社が政策的に一般より高めの料金を支払う)と、倉庫等の有形資産価値(優良な償却済物件も多い)だと言われており、M&A後は買収側が積極的にバックオフィスや設備・装置等の共通化によって固定費を引き下げる効果(増益要因)を引き出したり、自社にはない機能強化を図ることになります。ただし、先般のC&F社買収のように高額プレミアでM&Aを行った場合、その後の経営に資本的側面からマイナス要因となり得るリスクも含んでいます。

また、物流2024年問題への対応策として10年ほど前から様々な準備をしてきた企業(中小企業も含みます)の中には、競合を含めた物流業界全体の経営健全化を念頭に置いたM&Aを進めています。その観点で最も注目されているのがドライバー不足問題なのですが、実際に収益性を大きく左右する要素を含んでいるのは物流センター(3PL)・倉庫事業だと考えています。その理由はAIとの相性が良く、また省人化に繋がる倉庫内マテハン等の進化(自動化)がいち早く進んでいるからです。以前は倉庫立地は消費地への時間軸での距離・庫内要員の確保・IT化が最重要課題(判断基準)として挙げられていましたが、首都圏では交通インフラ整備(高速道)が最終段階に近づいているため、その点で運送事業との連携が重要なファクターになっています。

なお、日本国内の消費人口減少が続く中で、ECプラットフォーム事業(ラストワンマイルを含む)はまだ成長性が見込めますが、BtoB物量はおそらく緩やかな減少傾向に入るだろうと予測しています。そのため、既存事業構造の変化(DX・コンサル・周辺領域事業等)に投資・順応できる物流事業者への寡占化が進むと考えるならば、単なる運送事業者・倉庫事業者へのM&Aは現状の不足戦力(作業系要員)の補完に過ぎないと感じます。