オフィス鴻

最低賃金と処遇格差

2024年09月09日

本年10月から中央最低賃金審議会が、2024年度の地域別最低賃金額改定の目安について全都道府県一律で50円の引上げ答申を取りまとめ、全国平均1,054円(加重平均とは異なるようです)となる見込みです。本コラム(8月13日付「賃上げ論調の矛盾」)でも取り上げましたが、最低賃金法では「最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定める(中略)制度」と定められており、企業が地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には罰則(50万円以下の罰金)が定められています。しかし、扶養の壁から労働力不足に拍車がかかる(労働時間の調整)可能性が指摘されています。

また、年代別に見ると正社員であっても、これまでの30年間を振り返ればデフレと賃金抑制・社会保障費負担増加が続いてきた40~50歳代と、若手層の賃金上昇率に大きな差が生じていることは今後の社会保障制度維持に多大な影響を与える可能性(年金・医療・生活保護等)があることは想像に難くありません。また同じ若手層の中でも企業規模・昇進・昇給・結婚(出生率)の差が拡がっており、新たな格差が生じ始めているのも事実です。その他、会社規程で退職金制度のある企業は全体の20%(当然支給額に差はあります)、iDeCo(個人型確定拠出年金)の導入で退職金制度を廃止する代わりに月額報酬に上乗せ支給(B/Sから退職給付引当金を無くす)する企業も増えてきました。

そして最大の問題は、健康寿命(平均75歳くらい)までは年金以外の収入を得ることは可能でも、その後は社会保障(生活保護)に頼らざるを得ない年金生活者が増え、更なる社会保障費負担が現役世代に圧し掛かることだと考えています。編集人は10年前に企業内起業で60歳以降も提供スキルに応じて賃金が下がらない会社(1千人規模)を設立・新規程へと切り替えましたが、当初は従業員から相当の誹謗中傷を受けたものの、最近はその良さを認識してくれる従業員が増えているようです。