オフィス鴻

競合避止義務

2024年11月10日

企業で仕事をしていると、取引先情報・取引条件等の社外秘機密情報に触れることがあります。特に転職市場に於いては基本的に高い再現性(営業成果等)が収入増につながる一面があり、転職先企業での実績が伴わないと処遇が落ちる(年収減)ことが一般的です。ここで言う機密情報とは一般的に公開前のビジネスモデル・R&Ⅾ・M&Aなど以外にも、取引先担当者の名刺なども含まれます。編集人の場合は、名刺類も全て廃棄処理してから転職先に移りましたが、個人的なつながりまで規制されるものではないと考えており、当時は特にインサイダー取引(金融商品取引法等)に関わる株式売買は「李下に冠を正さず」として社内持株会への参加以外は一切行いませんでした。

また、競合避止義務は「自社の機密情報や利益を保護し、競争上の不正な行為を防止するため」のものとされていますが、多くの企業では従業員が入退社時に交わす誓約書・規則等で効力の担保を図っています。もう少し具体的に言うと営業部門の顧客リスト等といった企業機密に該当するものは、守られるべき利益・従業員の地位(管理職)・地域性・適用期間などによって法的な効力(妥当性)を判断されるため、職業選択の自由とも大きく関連してきます。そのため、企業側が代償措置として競業避止義務によって生計を立てる手段が制限されることによる不利益をカバーすること(合意書・解決金・退職金増額など)も多くの企業で行われています。

ただし、企業側が退職する従業員に対して競業避止義務の誓約書へのサインは強制できませんので、あらかじめ合意に向けた対策を講じておくことが大切だと思われます。特に退職金の支払い(減額・不支給等)を競業避止義務を守ることを退職金の支給要件に定めれば、裁判になっても認められる可能性があります。その他にも客観的に見て合理的な金額の範囲内であれば、企業が損害賠償を請求することもできます。とは言え、最終的には人間性と退職理由に収斂される課題であることも事実でしょう。