オフィス鴻

オーバー・クオリフィケーション

2024年10月17日

OECD(経済協力開発機構)の国際成人力調査によると、仕事レベルに対して学歴が高すぎる(オーバー・スペック)ミスマッチが日本では30%を超えることが報告されました。日本人の労働生産性の低さが指摘されて久しいですが、その根底には高等教育で獲得した読解力・数的思考能力を活かしきれない日本企業のジレンマがあるように編集人は考えています。また、大学入試では、ディベート力や問題解決力に対する相対的評価が低く結果的に暗記力等が重要視されてきたこと、大学院の修士・博士課程で学んだことが活かせないメンバーシップ型の新卒中心雇用体系が、さらなるミスマッチを助長している可能性が高いとも想定しています。

換言すれば、日本企業では将来性(ポテンシャリティ)が採用面で重視される傾向が強く、企業が必要とする即戦力型人材としての実績(これまでの研究成果等)の判断基準となる専攻分野の専門知識にまで採用側が深く理解していないことが大きな乖離を産み出す原因でもあるでしょう。その結果、オーバー・クオリフィケーションが顕在化することで学歴信仰が生まれ、早期離職や賃金の相対的低さに起因する雇用環境とのアンバランスが現在の日本の課題になったのだと考えています。編集人も人事部門を管掌していた時期がトータル20年間以上ありましたが、一律的な新卒採用者に比べて再現性の高い(他社の企業機密を欲してはいません)中途採用者の方が自社組織に馴染んだ場合には、高いパフォーマンスを発揮するケースを多く見てきました。

ここで読者に勘違いしていただきたくないことの1つに上司の存在が大きく影響していることです。少なくとも中途採用者で上司の扱いに富んだ(慣れた)方は、企業文化の違いに戸惑いながらも課題解決ルートを自ら切り開いていくことができますが、情けないことかも知れませんが徐々に悪弊に染まってしまうことが多かったという事実を認めざるを得ませんでした。