オフィス鴻

すきまバイト

2024年10月19日

タイミー社が本年7月に時価総額1千億円超で東証グロース市場に上場しました。これまでの人材紹介や人材派遣とは一線を画する仕組みと多額の宣伝広告、一度登録すれば当日1時間からスキマ時間にバイトができ即日払い(上限額あり)というビジネスモデルが、UberEats、ライドシェアの浸透も相まって拘束されずに働きたい人に支持されたようです。労働力不足が深刻な飲食業界等を中心に混雑時の短時間のみマッチングできるという点では雇用側・被雇用者側ともにメリットがありますが、例えば「飲食業の経験がある方」といってもベテランから昨日1日だけアルバイトした人でも同じ時給であり、履歴書不要でも当然ながら経験豊富なトラブルの少ないベテランや若手が優先的に割り当てられる仕組みのようです。

また、働く側のドタキャンや評価基準に達しないとペナルティとして一定期間アプリが利用できないほか、雇用側の前日キャンセルで補償が登録者に支払われているのかは不明です。しかし、人事労務に携わった経験からすると雇用契約が仲介会社経由である、副業などで月間総労働時間管理と責任関係や割増賃金の計算方法、社会保険料・税金徴収はどのようにしているのかなど、ある意味興味が尽きないビジネスです。もしこれが有期雇用契約に該当するならば、最低限必要な勤務場所・勤務時間を記載した雇用契約書を取り交わす必要があると思われますし、複数の掛け持ちともなれば誰が源泉徴収票を発行するのか、税金滞納の際に差押えができるのかなど現在の労働法制では対応できないことが多いのであろうと推測してしまいますね。

さらに、生活困窮者が簡単に利用できる日払いシステムがあるが故に日銭を求めて更なる貧困状態のループと労働力の選別が進むであろうということです。つまり、一定以上のスキルがない限り普通に考えれば他に収入獲得手段と体力のある若い労働力が優先され、本当に困っている中高齢者は後回しになるのではという危惧でしょう。結局はプラットフォームの設計思想次第だと言えそうです。