オフィス鴻

国家安全保障と不動産

2024年12月01日

数年前から日本の不動産が外資系企業に取得されるケースが増え、今では自衛隊の基地や原発といった重要な施設周辺の土地について、外資が自由に購入できる状況を安全保障上の問題として、多国に比べて遅ればせながら2022年に「重要土地等調査規制法」制定によって、国境離島や防衛関係施設周辺など一定の区域について、土地建物の所有者情報や利用状況などの調査、利用に関しても規制することが可能になりました。ちなみに日本は島国で無人島を含め国土地理院が約14千あると発表しています。また、重要施設や国境離島などのうち、機能が特に重要なものなどについては特別注視区域として個別に指定した上で、土地などの所有権移転などについて事前届け出が義務付けられ、違反者には刑事罰も課されます。

実際に対馬の一部を外資系企業が購入する、北海道の登別では中誤記資本に企業が太陽光発電施設を建設するなどが挙げられますが、問題の本質は外資系企業が外資以外の第三者名義で国内の土地を購入することに関して禁じる旨の規定がなく、事実上何の制限もなく取引が出来た実態でしょう。また、ほぼ同時期に改正種苗法が施行されたことで、日本の企業・農林試験場等が長年かけて品種改良した作物(主に果実)の種や苗、和牛の精子等が近隣某国へ密輸されたことで、日本の農業に数百億円単位の損害を与えたと言います。ただ幸いだったのは密輸された現地で品質維持するだけの技術が無く、その後の被害額が減少したと言います。

日本の不動産市場に世界から資金が集まる理由は金融緩和による超低金利政策にあり、機関投資家は株式・債券等以外にも調達金利が低くリターンも大きい不動産も対象にしてきました。海外では中国の一路一帯構想により多額の借金の返済ができないと港湾施設等を実質的に支配される国もあり、オーストラリアでは政府による土地の強制収用も可能であり、アメリカでは対米外国投資委員会がリスク評価を行い、大統領が取引停止・禁止を命じることができるそうです。