従業員の副業
2024年12月18日
以前のコラムで、他社での副業には本業の会社側が管理する項目が多く、副業先でも割増賃金を支払うなど多くの課題があることをお伝えしました。この根拠となる法律は労働基準法により複数の職場で働くろ従業員に対して労働時間を通算して管理することが定められており、実質的に労働時間管理を従業員本人の申告に依拠することになり実態把握が難しい点が指摘されていました。そのため、厚生労働省の有識者会議でもその弊害が取り上げられ、今後は副業の管理が緩和される可能性があることを示唆しているものと思われます。
そもそも副業の目的が金銭(収入)であれば、当該従業員が本業先および副業先へ正しい申告をしているとは限らない点があり、また労災発生時の対応も労働時間に応じて両社が行う必要があるなど、企業にとって使いずらい仕組みであったことは事実です。一方、副業目的が新たな視点で本業会社の事業に貢献できる、新たなキャリアプランの土台になる、地方創生(人手や能力不足を補う)といった観点であれば、ある程度期間・時間を限定した形で徐々に課題をクリアしながら解禁すれば日本経済にもプラスに作用することが期待できます。そのように考えると、人手不足解消より生産性向上・新ビジネス創造等に焦点を合わせた法改正が望まれる状況だと思います。
ただ、社会保障への加入要件が低くなった(加入対象者が増える)ことで、社会保険を支払わない働き方が増えてくれば、いずれ社会保険未加入者に対する社会保障費が膨張することは明かであり、国民の公平性を担保することができなくなる可能性があります。労働法制は戦後に作られたものを少しずつ改定する形で進められてきましたが、現在の危機的な状況を起こした一因として労働省(現在の厚生労働省)の試算の前提条件が楽観的過ぎたと言う意見もあり、そのツケはこれから先も国民が負うことになるのでしょう。いずれにしても、「なぜ副業が必要なのか?」について、政府・企業・従業員との合意形成が必要だと感じます。