オフィス鴻

タイミー社の課題

2024年12月19日

スポットワークのマッチングサービスで急成長したタイミー社の業績が、市場の予想(期待)を大きく下回ったことで株価が下落した時期がありました。最大の強みであるマッチングアプリ上で完結する隙間時間労働と給与即日払いにより、クライアントから成約額の約3割をサービス利用料として徴収するの高収益性が魅力ですから、スポットワーク業界にも新規参入者が続々と誕生して来るのは必然の理でしょう。ビジネスモデル自体は非常にシンプルで、先行者利得はクライアント(求人・求職)のリピート率(マッチング率86%)に確実に表れていますが、今後は後発組の優位性を活かした形でかいずれ価格競争と人材の争奪・囲い込みが始まるように感じます。

人事労務面でも1求人先あたりの1人当たり給与上限が設けられ、月額88,000円以下とすることで社会保険徴収対象から外れるシステムがあると言われます。単純計算で時給1,200円とすれば月間労働時間は73時間ほどになりますので、今後社会保険料等の徴収逃れとして法改正が行われるリスク、最低賃金上昇により労働時間上限が低くなるリスクなど以外にも、労働者が自ら確定申告を行う必要も出てきます。特に普段は別企業でフルタイム勤務して副業として行っている場合には、求人側に割増賃金の未払いが発生する可能性や年間20万円を超えれば雑所得として課税対象ともなります。収入が減少すれば他社のマッチングサイトと併用する方も増えるでしょうから、税務署が個人所得を補足することで未払いとなっている税金・社会保険料等の徴収に動くことも考えられます。

また、一部では求職者の選別が求人側都合のキャンセル扱いとして処理されるケースや低スキルの人材がマッチングされトラブルになる事例も報告されており、手軽さと裏腹に多くの課題があるとも言えそうです。同社は今後M&Aや人手不足の飲食・物流業務以外に製造業・警備業・自治体などにも販路を拡げる戦略を進めているそうですから、その動向を注視したいと思います。