オフィス鴻

物流は産業の血液

2025年01月16日

構成取引委員会は、オフィス家具大手のイトーキ社が運送事業者に対する独占禁止法違反(不公平な取引方法)の疑いで行政指導(警告)を行いました。実に15年ぶりに適用される「物流特殊指定による指導」とは、➀減額、➁買いたたき、③購入・利用強制、④割引困難な手形の交付、⑤不当な経済上の利益の提供要請、⑥不当な給付内容の変更及びやり直し、⑦要求拒否に対する報復措置、⑧情報提供に対する報復措置が該当しますが、特に➀➁⑦⑧は運送事業経営にとって影響が大きいものです。編集人が関連会社の監査をしていたときも➀③の行為があり、即刻全協力業者との契約見直しを実施しました。

今回は、契約で定められた時間を超えた業務に対して追加料金を支払わなかったことが報じられていましたが、その他にも配送以外の業務に対する対価が未払いだったと言うことですから、イトーキ社側が未払い料金全額(時効分については不明)を支払うことを約束したと言います。公正取引委員会は、毎年下請法違反の調査を実施していますが全国にある数十社の協力会社の相当数が不当行為を報告したのだと思われます。ここである疑問が生じるのは、運送業者とドライバー間で未払い残業が無かったと言う観点が抜け落ちている可能性があるのではないかという点です。もし、ドライバーに対する未払い賃金があるとすれば、当該未払い期間に関して今度は運送事業者に労働基準監督署が調査を行うことになるでしょう。その間も商品供給は続けられますから、単にイトーキ社だけの問題に留まらなくなる訳です。

同様な事例は、複合機・事務用品・家具メーカーなどでも行われている可能性はありますが、これを機に法令遵守と契約締結について運送事業者側も理解を深めて交渉する必要性を感じます。表題の「物流は産業の血液」と言われるのも商品供給(配荷)無しには売上計上できず、特に学校の新学期や引っ越しシーズンに業務が集中する時期でのイトーキ社の販売機会損失等の金額は未払い料金を上回る非常事態とも言えるでしょう。