オフィス鴻

サントリーの物流改革

2024年12月27日

サントリー社がドライバー不足へ対応するための3本の矢の施策を発表しました。持続可能な物流体制を構築するため、大和ハウス工業社と共同で埼玉県の浦和美園配送センターの設計を行い、 入出庫受付の自動化(1時間の荷役時間短縮)、AGF(Automated Guided Forklift)によるトラックへの自動積載など実用化に向けた実験を開始しています。その一方で、子会社であるサントリーロジスティクス社が協力運送事業者への支払運賃を下げる旨の打診をしたことが同業者間(出所先は敢えて書きません)で大きな話題になりました。その中でも大手と呼ばれる臼杵運送株式会社・大阪運輸倉庫株式会社・鴻池運輸株式会社・日本通運株式会社などは受託貨物量も多いため、恐らく何らかの影響を受ける可能性が高いと思われます。

それでは、「持続可能な物流体制構築」によって得られるものは何かと考えると、➀運送事業者が常に生産計画に合わせて手配できること、②料金改定時に諸条件の変更を行い、トータル物流コストを下げること、③現行法令(労働法等)に抵触する行為を招かないようにすることの3点にあると編集人は考えています。➀および➁はCLOを中心として検討され、結果的にサントリー社の利益を上げることに貢献します。問題は③で、荷主責任が問われるようになっても最後は協力運送会社が法定資料(運行記録等)を改竄してしまえば同社に対するお咎めなしとなることが想定されます。また共同輸送の弱点として、企業間の物量差・繁閑期繁忙期対応・インセンティブ分配方法が物量の多い製造事業者優先になることが挙げられます。社会的貢献度ではプラスでも、いずれはその小さな綻びが河川決壊と同じように大きな問題となることがありそうです。

その一例として、多くの製造業者が商品値上げ理由に「物流費の高騰」を挙げていますが、果たしてどの程度商品価格に転嫁されているのかは消費者には判りません。実際、製造事業者の物流費上昇率は3~5%と言われますから、責任転嫁とも言えるでしょう。