オフィス鴻

コメ流通の課題

2025年01月08日

昨年は新米が流通し始めた10月頃から、令和の米騒動(コメ不足)の報道が極端に少なく単に少なくなりました。時折、飲食店等での食材価格高騰(円安・食料不足等)の一部としてコメ価格の上昇が挙げられますが、提供コスト全体から見れば平均物価上昇率と大きく変わらないものと考えられます。実際、高温障害による若干の品質低下はみられるものの収穫量は例年並みであり、これまでの農政の弊害と収穫端境期、そしてマスク同様に一部のパニック買いが引き起こした実態を反映していない状況だったと思われます。実際に農政の目玉政策であった減反政策は数年前に形を変えて主食米以外(飼料・酒米等)を作付けしても補助金が支給されており、農家廃業による収穫量減少と諸物価高騰(農機・肥料等)に見合った米価への転嫁がこのタイミングで行われたと考えるのが妥当なように編集人は思っています。

すでに中規模以上の農業従事者は、独自の販売網(専売契約・ネット直販・ふるさと納税返礼品等)へと販路を拡げており、中小コメ卸事業者の淘汰と相まって農協(JA)を経由しない新たな農業経営に舵を切り始めています。一方、兼業農家であれば、独自の販売網構築で好収益化するよりJAに安定的かつ全量買い取ってもらうことにメリットが大きいことは想像に難くないでしょう。先述の主食米以外への補助金政策でも、小規模でも営農を続けている限り(一旦、生産を止めてしまえば再度田んぼを復活させるのに大きな手間がかかる)は主食米への切替が可能といわれており、政治的配慮や利権構造が引き起こした人災的側面があるように思います。

なお、インバウンド需要によるコメ消費量の増加も全体から見れば5%弱程度ですから、日本の消費人口減少と食生活の変化がコメ消費量の減少を招いているという事実にきちんと向き合うことが今後の日本国家としての食糧戦略の軸となると考えています。また、新規営農者を受け入れる法改正などを進めることで地方再創生への一助となるように感じています。