新幹線での貨物輸送
2025年01月13日
JR東日本が、新幹線の先頭車両(客席数が少ない)を貨物専用に改装して、閑散時間帯に運行する便を中心に貨物輸送の実証事件を始めています。きっかけは、コロナ禍による利用者低迷時に一部の列車で海産物や電子部品などを空きスペースや座席を活用して試験的に輸送したことから現在に至っています。最大120cm(LWH)サイズの貨物をカーゴテナー台車に積込み、2tトラック1台分の生鮮食品・ご当地グルメ・医薬品・半導体など付加価値の高い貨物をターゲットとすることで、現在航空貨物が主流の輸送業務より短時間で届けられるのが特徴だと言います。しかし、駅構内に新たな導線を確保する必要があり設備改修費等も多額に上ることから、まだ採算が取れる段階に到達するにはいくつもの課題があると考えられます。
例えば山形~東京へサクランボを送る場合、新幹線普通車料金は大人1人あたり11,250円(片道、変動あり)になります。台車のスペース換算を4席分、1台車に20個積載できるとすれば80サイズのクール便で1箱当たり1,260円なので合計25,200円となり、集配料金を含めれば相当割高になります。ただし、衝撃に弱い精密機器・半導体等であれば商品価格が高いので、トータル運搬費は低減できる可能性があります。また、新幹線運行ダイヤの多さと運行時間を考慮すれば当日配送が可能な利点を生かして、緊急対応にも対応できます。ある企業では、緊急輸送は人手で新幹線の手荷物にして届けていますし、飛行機の国際線でも同様のビジネスが存在します。
当然、JR貨物と競合関係となるビジネスではないため、高付加価値品に特化して閑散期(閑散時間帯)の新たな収入源として考えれば、昭和中期には一般列車に郵便車が連結していたことと目的は異なりますがよく似た取り組みです。敢えて高額な費用の掛かる車両改造をしなくてもコロナ禍ではガラガラの車両(座席)に貨物を乗せて運んでいましたから、繁忙期は乗客用にできるならば初期投資は少なくて済みそうです。