オフィス鴻

「SAKE」の伝統

2025年01月04日

日本がユネスコの無形世界遺産に登録申請した「伝統的酒造り」は、他のお酒にはない麹を使って原料(主に酒米)の並行複発酵技法を用いることで、でんぷん質を糖化させてから麹の力を借りてアルコールへと変えていく世界的にも珍しい、また手間のかかる工程を経て市場へと供給されます。製法そのものは室町時代に確立されたとしていますが、海外でも人気の高い「獺祭」にように従来ベテランの杜氏が行ってきた複雑で個性が表れる手法から、化学技術を基に細かく管理された品質にばらつきがなく、生産量も一定している工業的製造方法を行う醸造家(酒蔵)も増えてきました。

2013年に「和食」が無形文化遺産に登録されて以降、海外では和食と相性の良い日本酒人気が高まり、輸出量も徐々に増加しています。日本国内でも若者のアルコール離れが進んでいますが、海外では比較的高価で醸造アルコールを使わない純米酒が人気だと言います。編集人は、社外人脈が拡がり始めた30歳頃からよく利用させて頂く日本料理店で、蔵元が特別に製造した当時でも貴重(一般ルートでは手に入らない)だった日本酒を料理と併せて楽しんでいました。昭和時代の角打ち(酒屋の店先で飲む本醸造酒)で出されていた1級・2級酒に比べて、最近は杜氏名の入ったもの、季節(特に夏酒)や麹・酒米・仕込み水を使ったものなどが人気が高いようです。普段は日本酒を召し上がる機会が少ない方でも、飲食店では料理とのマリアージュを考えて品揃えしているケースも増えてきました。

他の焼酎・ウィスキー・ビール等と日本酒・ワインが異なる点は、工業的に管理されたアルコール飲料と比べて品質や味がその年の天候・原料によって少しずつ違うところにあります。当然、飲み過ぎは禁物ですが、飲食・酒販店等で販売されていない隠れた銘品もあります。また、一般公開していない酒蔵でも、飲食店の紹介があれば試作中のものを含めて試飲させてくれる酒蔵もあります。まさに先人達が努力を惜しずに築き上げた日本文化の1つでしょう。