オフィス鴻

奨学金の代理返済

2025年06月14日

東京都が今年度から実施する奨学金代理返済制度を企業が導入する場合のメリット・デメリットについて考察してみました。まず大企業では初任給が30万円を超える企業が多くなり、相応の利益があることで優秀な人材を確保する狙い(メリット)があります。一方で中小企業ではまだ25万円程度ならば良い待遇だとも言えそうです。実際の手取り額は支給額面と違い社会保険料・所得税などが控除(24控除)され、さらに翌年6月からは住民税も差し引かれます。一部の学生は多額の借金(奨学金)を背負った状態で社会に出るのですから、大企業以外では様々な優遇策が講じられたとしても生活水準を切り詰めていかなければ生活できないでしょう。

編集人が新たに立ち上げた事業会社では、仕事に必要な資格取得支援は福利厚生の一環として受験上限回数を設けて会社負担としていました。ただし高額になる運転免許などは「準消費貸借契約」を締結することで社会保険料・税金が増えないように貸付金扱いとする仕組みを導入していました。しかし奨学金代理返済となれば多くのデメリットが存在します。まず貸付金とすれば税法上の課題は殆どクリアされますが、そうでなければ単なる所得と同じ扱いに見做されることや代理返済制度だけを利用して途中で退職してしまうリスク(最低労働期間の縛りがない場合)も高くなります。つまり、奨学金の代理返済制度は制度設計の段階からきちんと整理して運用を開始しないと従業員・企業ともに思わぬ落とし穴に放り込められる可能性がある制度でしょう。

そのように考えると安易に奨学金(貸与型)を利用することは就職後に教育ローンを長年支払い続けることと同意ですから、安易に借りないことが懸命です。現在は空前の人手不足状態の日本ですが、やはり学歴・学校歴がないと学生が望む仕事に就けないことも多くあります。しかし奨学金という名の借金であることには違いはなく、格差社会の拡がりの一端を示しているように感じます。それを覚悟した上ならば、あとは自己責任と言えるのかも知れません。