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特定最低賃金

2025年08月08日

特定最低賃金とは、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた特定の産業について設定された賃金のことを指します。厚生労働省の資料によれば2024年度の対象となる適用使用者数約9万人、適用労働者数約296万人とされており、関係労使の申出に基づき最低賃金審議会で決定されます。同最低賃金は全国加重平均で1,063円と対前年比でプラス51円となっており、適用業種にはその地域の特性が反映されています。また地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。

ただし特定最低賃金は特定地域内の特定産業労働者とその使用者に適用されますが、18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方には適用されません。また一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれから個別に最低賃金を減額する特例が認められています。その他にも都道府県ごとに適用業種や適用除外となるケースが細かく異なっており、事務職等にも適用される場合がありますが不安であれば各都道府県労働局へ確認することをお勧めします。

近年は介護分野における人手不足が深刻化していて、​この課題に対処するため、政府は介護職への特定最低賃金の導入を検討しているとされています。​そのような中で厚生労働大臣が介護職員の処遇改善が喫緊課題であるとの認識から特定最低賃金活用に言及したことは、介護職員の賃金水準を引き上げ人材確保と定着を図る狙いがあると見られます。​しかし地域別最低賃金が法令であるのに対して、特定最低賃金は都道府県ごとの労使合意に基づいて金額が決定されるためどのようにクリアしていくのかはまだ未定と言えます。なかなか知られていない制度ですから一考の価値がありそうですね。 ​