ホテルのカルテル
2025年09月24日
今年5月に公正取引委員会が都内でホテル運営をしている大手15社に対して、独占禁止法違反(不当な取引制限)に抵触している可能性があるとして警告が行われました。その背景にはビジネスホテル業界などにも同様の商慣習がある懸念があるとされています。具体的には各ホテルの稼働状況等の情報交換を頻繁に行い、客室単価などへと反映されていたとされています。実際に日本人の出張者が東京に来るとホテル代金がインバウンド需要で2万円近くになっていて、支給される旅費手当では足りずカプセルホテル(それでも1万円近い)に宿泊せざるを得ない方も多いようです。
東京商工リサーチ(TSR)の調査ではダイナミックプライシングが浸透しつつあるホテル業界ですが、先述のように客室単価は2倍近くになっていることもあるそうです。ホテル以外の業界でも同じようなカルテルが行われていることはかなり昔から知られていますが、最近の公正取引委員会の活動は既存権益や下請法違反などに対して業界を問わず厳しくなっているように思われます。編集人もホテル経営に参画したことがあり、その経験からするともし客室情報が共有できたとすれば売上だけでなく人件費等のコントロールも可能になります。今回のカルテル事案では、最終的には消費者利益に対する優先順位は低かったのだと考えています。
もう1点は客室稼働率が80%を超えることは、ホテルにとって大きな利益をもたらす視点です。人手不足・原材料費高騰などがあるにせよ、固定費が賄えることはホテル事業や設備型産業を継続する上で非常に重要な要素です。最近は料金比較サイトや旅行サイトなどで簡単にホテルを予約することができますが、仲介事業者(プラットホーム)への手数料が発生します。編集人はこのような価格競争がホテル事業者の首を真綿で締めるような経営リスクであることとカルテルでは無関係ではないと考えています。最終的には経営方針次第でしょうが、色々な意味で考えさせられる編集人でした。