オフィス鴻

海上保安庁職員の離職

2025年08月27日

読売新聞の記事によれば2024年度に海上保安庁を自己都合退職した職員が389名となり、職員増を続けてきた2013年以降で初の人員減少となったとありました。北朝鮮不審船や中国公船の尖閣諸島周辺での領海侵入に加えて、2~3年ごとに転勤を繰り返すことや職務上家族との通信手段も制限されるなどがその背景にあるとされています。また2024時点での海上保安庁職員は約15,000人、保有船舶(大型・多目的巡視船)は91隻となり、海上自衛隊の約43,000人体制と合わせ周囲を海に囲まれた日本特有の国土を鑑みれば国土防衛に大きな存在感を発揮している組織です。

さらに海上保安庁法では「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」とされ非軍事組織として強く定義されています。しかし周辺国艦船等と常に対峙している現状では、本来の任務である人命救助・船舶航行の安全確保・海洋調査よりも領海警備に比重を置かざるを得ない国際情勢とも言えそうです。そこに労働環境改善を進めてはいても人口減少は着実に起こっていますから、海上自衛隊同様に艦内居室確保、省人化運営、新技術導入など次の時代に向けた施策も講じられています。

因みに海上保安庁のHPには海上保安庁長官の挨拶として「近年ますます海を巡る問題が複雑多様化しグローバル化するなか、新たな観点や長期的な視野に立って海上保安体制の更なる強化を図り、現場における業務遂行能力、即ち「現場力」を高めるとともに「法の支配」の体現者たる海上保安機関の役割をしっかり果たしていきます。」、「強靭で持続可能な、そして人を大事にする組織作りを目指し、人材確保・育成、業務の効率化、やりがいの持てる職場環境への改善などの課題にも取り組んでいきます。」とあります。具体的にこれらの施策がどこまで実現できるのかが今後の海上保安能力強化に大きく影響してきそうです。