大企業の人員削減
2025年09月17日
昨年あたりから大手企業が黒字であるにもかかわらず大規模な人員削減を実施することが増えました。日本経済新聞を毎日見ていれば否が応でも関連記事が出てきます。今年度もパナソニックが1万人、日産が2万人規模の人員整理を発表していますが、日産については巨額の赤字を計上しているため工場閉鎖が主であり転勤か退職かの決断を迫られている方も多いのかと推察します。西洋文明の効率化は近代社会に大きな影響を与えてきましたが、最近の世界では大消費時代の終焉が警告され、日本人が昔からとっていた「静かな生活様式」が見直されるようになっています。
編集人は今から30年以上前に某企業内で黒字希望退職に従事したことがありますが、従業員だけでなく人事担当者にとっても過酷な作業でした。よく言われることに「残るべきか去るべきか」の判断は周囲の行動や一時的な感情に流されないようにすることが大切とされています。以前にもこのコラムでご紹介した通り、整理解雇の4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力義務の履行・被解雇者選定の合理性・解雇手続きの妥当性)は赤字企業では認められます。しかし実際に希望退職となれば年収の高い40歳代・50歳代のホワイトカラー層が狙い撃ちされるのが常で、その後の再就職が難しい年齢層でもあります。
しかし今一歩俯瞰的に考えれば、自分自身の能力棚卸の機会だとも受け取れます。言い換えれば特定企業内だけで通用するスキルでは転職の壁が大きく立ちはだかっているということ、および割増一時金はあくまでも当座の生活を支えるものだと言うことです。更に踏み込んでいけば、初任給が大幅UPした20歳代はその代償として高い社会保障費を負担せざるを得ない日が刻々と迫っているのです。AI技術がホワイトカラーの仕事を奪うのではなく、内観して努力を続けていかなければ時代の流れに乗ることができずに結果として望む仕事ができない社会が待ち受けているでしょう。