ベテラン看護師の退職
2025年09月05日
日本医療労働組合連合会とは、医療・介護・福祉の現場で働く方約17万人が加入する団体です。今年6月に同連合会が発表した資料によれば、多くの医療機関で看護職員数の退職が採用数を上回っており「人手不足が深刻化しており、入院が必要になっても入院出来ない事態が現実味を帯びている」としています。その理由として2024年度の冬季一時金減額が取りざたされ、特に10年以上のベテラン看護師の退職が目立っているようです。また全産業に於けるどの職種でも賃上げ傾向はあるものの、その中でも看護職員の賃上げ率は平均より低いとあり、構造的な要因があるとされています。
同じように訪問介護の現場でも基本報酬が引き下げられたことを受けて、事業破綻する訪問介護事業者も増えています。ここで編集人が大きな問題だと捉えていることは、一般にやりがい搾取のような誰かの善意や意欲によってこれらの業界が支えられてきたと言う事実です。医療費削減は日本の喫緊の問題ではあるものの、コロナ禍では病床不足が騒がれた一方で看護師不足はあまり取り上げられていなかったように記憶しています。つまり人的資源が不足してしまえば、いくら病床数等をコントロールしようとしても治療の機会はさらに失われていくという点に踏み込まなければ、いずれ医療が受けられなくなると考えています。
実際に編集人も主治医のいる大学病院で入院治療を受けていますが、ここ2年程は専門診療科病棟へ入院できたのはわずか1回だけでした。そのため他診療科病棟まで主治医が診察に出向いてくれることで、本来もっと多くの患者を診る時間が失われているようにも感じました。もし病床数の適正化によって最適な医療が提供されるとしても、その代償を国民や地域患者が受け入れることが本当にできるのかは甚だ疑問でしょう。もう1つは医療機関と言えども経営が破綻してしまえば廃業せざるを得ない訳であり、この競争原理を一般企業と同じように適用することは慎重に行われるべきことだと思われます。