オフィス鴻

架装企業のカルテル

2025年10月08日

特殊架装車両と言っても、一般の方には判りずらい物です。具体的には消防車・救急車、ダンプトラック車、タンクローリー車など、一般的な輸送車両と異なる特殊な架装が施された車両を指します。その中でも最大手に属する極東開発工業社(グループ企業を含む)に対して、公正取引委員会から不当な取引制限があったとして独占禁止法違反で59億円に上る課徴金納付命令が発出されました。トラック運送業界にとってシャーシ(車両の基礎部分)と架装(主に荷台部分)が一対にならなければ道路運送事業が行えないため、事業継続そのものに多大な影響を与えることは明白な違反行為です。

また同業種の新明和工業社グループ企業による同様のカルテルに関する立ち入り検査が行われていましたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)によって処分は免れるものと推測されています。この制度自体に課題はあるものの、少なくともカルテル摘発のきっかけとなる効果は期待できます。そしてもう1つは車両価格の恣意的な高止まりが、一般消費者の購買行動に物流費高騰として転嫁されることの問題です。あくまで一般論ですが貨物運送事業において車両価格は原価の30%を占めるほど大きなものであり、このカルテルによる原価上昇分は運送費として製造業等の荷主にとっても転嫁されるのです。

編集人も一時期この車両価格(車両+荷台・装備)を管理する立場にありましたが、トラック車両製造メーカーによる不正行為(検査結果)が発覚して以降、トラックの納入時期が通常3ヶ月から最長2年にもなっているのです。このことは運送事業者にとっても非常に懸念する状況であり、他の業界でも報じられているようにカルテルが如何に多くの国民に不利益を与えること、および目先の利益を追求することが結果として企業業績にダメージを与えることが証明された形です。課徴金59億円は予想よりかなり少ない金額ですが、公正取引委員会には引き続き監視をして頂きたいと考えています。