オフィス鴻

酒蔵とインバウンド

2025年11月09日

日本経済新聞16面(2025年7月31日付)に、地方の酒蔵がインバウンド客向けに試飲・見学をセットにして販売しているとの記事が掲載されていました。かつてから酒蔵を訪問する酒蔵ツーリズムがありましたが、日本酒特有の製造方法とその味の多様性・奥深さに惹かれて日本酒を訪日目的とする方も官公庁の調査では30%程度いるとの資料もあります。編集人も今から30年ほど前に日本酒唎酒師資格を取得しましたが、先日あるTV番組で同協会特有の日本酒の仕分けがされた店が紹介されていて、日本酒に詳しくない方でも自分の好みに近い商品を選べると感じました。

酒蔵側も訪日客への対応として外国語が話せるスタッフを配置したり、季節を感じさせるデザインの採用、ゲームセンター的な集客要因、自動試飲サーバー(無料・有料)の導入など、様々な工夫を凝らしているそうです。訪日客が地方で日本文化に触れる機会が増加していますが、一方で地方人口は都市部を含めて減少傾向にあります。ある意味では訪日客の増加に対応できない地域・企業が出てきている訳で、実際に営業利益率の高い試飲・見学サービスが普及すれば地元に雇用が生まれることにも繋がります。そして日本でしか購入できない酒類があれば、お土産としての販売も期待できます。

もう1つ見逃せない点は、日本酒造りに欠かせない酒米・包装・ビン・配送費など以外にも人件費上昇といったネガティブな要因があることでしょう。しかし日本酒に価値を認める購買客にとっては4合瓶(720ml)で3,000円程度ならばかなりお買い得の価格帯だと思われます。実際に財務省貿易統計によれば、2024年度の日本酒輸出量は10年前に比べて約2倍に増加しています。その背景には日本酒特有の嗜好性と海外での日本食ブームがあると考えられ、本物の日本食文化を体験してもらいリピーター化や広めてもらうにはこのような地道な方法も有効であると思われます。