オフィス鴻

新たな運送グループ誕生

2025年11月14日

今年8月の日本経済新聞に、中小加盟団体との協定を軸とした新しい共同輸送網構築に関する記事が掲載されていました。国土交通省の資料によれば中小運送事業者が共同配送に参画出来ない理由として、①荷主への交渉力の低さ、②積載率の低さ(帰り荷確保と料金交渉)が挙げられています。しかしこの課題は長年にわたって運送業界で議論されてきた内容で、今更ながら感が強いものの、それだけ物流網維持が喫緊の課題であることの裏返しだと考えています。例えどのような美辞麗句を並べても、業界全体が持続可能産業となるのは適正な料金と従業員の処遇向上がカギだと考えます。

この記事ではヤマトホールディングス社が子会社のSST社を通じて、地方中小運送事業者3,500社と幹線輸送(中長距離輸送)委託を軸とした提携を行うとされています。裏を返せばヤマトグループだけでは現在の配送網を維持できないメッセージと受け取ることができます。特に地方運送事業者の衰退が社会問題となりつつある中、宅配関連事業のインフラ維持が難しくなっている現実を示しているのでしょう。最近は貨物・車両とをマッチングする新興企業が幾つも誕生していますが、いずれも仲介手数料の高さが運送事業者の収益性向上の足枷となっていることに変わりない状態だと推察しています。

また他社では2,500輌の運送事業営業許可が取り消された日本郵政が西濃運輸と約1万輌のトラックをベースに共同運行(日本郵政は子会社の車両)を始めていますし、システムベンダーによる運送事業者・荷主の囲い込みも始まっているとされています。その他にもAmazon社と取引関係のある大手運送事業者が、同じような中小事業者との協働を模索しています。ここで考慮すべきことは、中小事業者側の声を代弁している感が乏しいことです。実際に大手傘下に中小事業者が飲み込まれてしまえば最終的に経営の首根っこを掴まれているのと同じであり、元の木阿弥になるリスクがあると感じています。