オフィス鴻

階級社会と移動選択

2025年12月22日

伊藤将人氏の著書である「移動と階級」という書籍を購入しました。はじめに「行きたい場所に、いつでも行けますか?」「自分の移動を自分で決めて、実行できますか?」という問いかけで始まります。そして「移動できる人」と「移動できない人」の間に大きな格差が存在していることが指摘されています。編集人は身体障害者であり、自分1人での移動は機能的に大きく制限されています。例えば最寄り駅に買い物に行くことが難しい、病院(大学病院)への外来は往復タクシーを使う、同じく調剤薬局には自宅までの配達をお願いしているなど、数え上げたらキリがありません。

また最近よく聞く言葉に情報弱者が挙げられます。実際に被災地等では高齢者の情報収集能力が低いことや、ある程度の資産を保有し常に最新の情報にアクセスできることが生死を分けるとも言われています。特に最近の日本では局地的豪雨・線状降水帯、熱暑といった自然災害が大きく増加しています。東京都では熱中症対策として、エアコン未設置家庭に対する購入補助金を1万円から7万円程度にまで引き上げていますが、これは富裕都市である東京だからこそ可能な政策とも言えます。そのような意味では情報格差が、厳然として個人生活レベルに影響していることが伺えます。

この書籍では著者が「移動格差(Mobility Gap)」という言葉をキーワードに、異動の社会性について分析されています。人類がアフリカから世界各地へ移動していたと言う学説が一般化している中で、階級・階層、性別、国家・地域等のそれぞれの特徴から移動に対する機会差が生じていることも事実でしょう。一方で企業・行政の施策には限界がありますし、個人の考え方もまた同じではありません。最終的には「なぜ移動が必要なのか?」「移動の価値をどのように見出すのか?」といった視点で考える必要があると考えており、そこに個人の尊厳が関連していると感じています。