社会保険労務士の倫理感
2025年11月25日
今年に入って社会保険労務士会連合会が、社会保険労務士倫理に反する広告の排除に乗り出しているとの報道がありました。同協会によれば社会保険労務士として登録されている方は約46,000名で、そのうち開業等は約28,000名、企業勤務者は約17,000人とされています。また今年6月には社労士法が改正され、根本的な変更の一つが社会保険労務士法の第1条に新たに「社会保険労務士の使命に関する規定」を設けた点だとされています。換言すれば事業の健全なる発展とともに労働者の福利厚生に資するとされたことで、労使間の中立性を明確に後押ししたことになります。
条文を見てみると、「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする」と書かれています。しかしなぜこのような改正が行われるに至ったのかを調べていくと、社会保険労務士の多くが企業との顧問契約を中心に運営しており、収入に結び付く企業側に中立でない配慮が発生することを危惧している背景があるようです。
社会保険労務士業務は労使間に於いて公正な立場で業務にあたることを前提として独占業務が認められており、その倫理観が欠如し始めていることを行政が危惧しているとも考えられます。また実際に不適切と認定された広告は800件近くに上っており、業務停止処分を受けた社会保険労務士もいます。つまり企業側から顧問報酬を受領している以上、ビジネス競争原理の中ではある程度の不心得者が出てくる可能性を否定できない現実があるということでしょう。多くの社会保険労務士は責任感を持って業務にあたっていると思われますが、業界だけでの自浄作用には限界があるように感じます。



