オフィス鴻

転職と労働行政改革

2023年12月26日

政府は、労働市場改革と少子化対策の1つとして、2028年度をめどに約700万人とも言われる週20時間未満の短時間労働者を中心に、雇用保険対象者を拡大する方向にあるようです。日本は、硬直的な労働市場(終身雇用、年功序列など)だとして、欧米の実例を参考に人材流動化などを図るため、転職による失業給付・休業手当の支給制限(自己都合退職は2か月の支給待機期間が適用される)を、7日程度+1ヶ月と短縮する案が有力です。

ただ単に雇用流動性を欧米並みに近づけても、転職希望者(労働意欲)とのアンマッチ、待遇改善がなおざりとなる可能性が高いと感じます。また、1万以上ある教育訓練給付対象講座や特定一般教育訓練給付(webクリエーター、中小企業診断士資格、介護職員研修、大型自動車運転免許取得など)でのスキルアップなど、効果の見えずらい支援制度も多いです。そのほか、10年以上前のハローワーク職員(非正規の任期雇用者が8割と聞きます)の職業紹介対応の酷さは有名でしたが、本当に適切で寄り添うような対応や適切なマッチングを期待することは担当者により大きな差がありそうです。

一方で、非正規雇用者に対する十分なセーフティーネットが整備されていないとの声に配慮したのか、「労働政策審議会(厚生労働省の諮問機関)」での議論は既に始まっています。特に人件費割合の高いサービス関連産業では、コロナ禍対策で余剰金が大幅に減少したために実施される保険料率改定(企業0.95%、労働者0.6%)の負担増が懸念されています。加えて、労働者側にも新たな保険料負担が生じることや、企業の過少申告等による厚生年金加入漏れ者が100万人に上るとの推計もあります。さらに、多くの中小企業で社会保険料納付(厚生年金も含む)が必要ない労働時間調整の実施、抜け道的な保険料支払いのない短時間労働の掛け持ちも現実に行われており、まずは負担に応じた公平な分配の制度の再設計が望まれます。